台風5号が抜けた後、今日までフェリーも運航している模様ですが、今日の夜に鹿児島を出る船は欠航となったようです。
農作物にも建物にも人にも、様々な被害をもたらす台風ですが、台風が来ない年は、いつまで経っても海は濁ったままです。
きっと必要な自然の営みの一つなのでしょうね。
元々空も海も都会に比べると澄んで綺麗ですが、台風が抜けた後は海中の塵も空気中の水蒸気も全て洗い流されて、驚くほど透明な風景が広がります。
旅行計画が立てづらい台風シーズンではありますが、タイミングが良ければ宝石箱をひっくり返した様な息を呑む程の星空を見る事ができるかもしれません。
写真の右側、当ホテルの東側に迫るのは「猫の鼻」という山で、島口では「マユンハナ」と発音します。
マユというのは猫。中国語のマオと同じで鳴き声が由来です。ハナは山や丘など周囲から高くなったところ。
こちらには多くのクロウサギが生息し、たまにホテルのすぐ上の道まで降りてきます。
また古老の話では、かつては「ケンムンマーチ」という妖怪の住処でもあったらしい。
「ケンムン」は「怪(ケ)のもの」の島口で、ヤマトでいう「ものの怪」。「マーチ」は「灯」です。いわゆる鬼火のようなものらしい。
この辺りの集落にはもう一つ「イノンヌフージ」(磯の中の爺)という鬼火があって、
黄昏時(島ではユットゥシットゥヌエ)に磯でイノンヌフージの赤い火が揺れ出すと、それに誘われて「猫の鼻」で最初一つ表れ、だんだん数を増やしながら磯まで下りてきて、また「猫の鼻」へと帰っていくそうです。
ウィキペディアによると他の島のケンムンは悪さもするようですが、この集落の「ケンムンマーチ」は実害はないと言われています。
因みにウィキペディアには、ケンムンは河童(カッパ)のような姿で・・などと書かれてますが、どうもケンムンを特定の物の怪と誤解して、様々な物の怪の特徴が混在してしまってる印象です。
古老の話や民俗資料を読んだ感じでは、ケンムンはものの怪の総称なので、当然様々な種類がいます。
河童を見た人にあれは何?と聞かれて「妖怪」と同じような意味で「ケンムン」と答え、誤った認識で伝わったのではと推察します。
河童はこの辺りの集落の島口で「ガワラ」と呼びますが、「河の童(わらべ)」で字面そのままですよね。ヤマトのカッパの語源もガワラからの音変化という可能性もあります。
近年、ケンムンマーチを見たなんて話はトンと聞かなくなってしまいましたが、クロウサギもケンムンマーチも絶滅せずに共存できるような島を未来に残していけたらなって思いますね。